体の抵抗力が弱く、持病のある人も多い高齢者が感染症や食中毒にかかると重症化する可能性があるため、高齢者施設においては徹底した衛生管理が重要になります。こちらの記事では高齢者施設内での衛生管理のポイントや注意すべき食中毒の種類などについて解説しています。
厚生労働省が発表している、高齢者施設内において対策すべき衛生管理のポイントについて紹介します。
施設内の環境の整備としては清潔に保つことが重要となり、日常的に整理整とんを心がけて清掃を行う必要があります。優先すべきは入所者にとって居心地が良く、住みやすい環境づくりで、消毒薬による消毒作業よりも目に見えるホコリや汚れを除去するようにしましょう。
また、感染対策に必要な手洗い場やうがい場、汚物処理室といった施設・設備を入所者や職員が利用しやすいように整備することも大切です。手洗い場においては、水道カランの汚染による感染防止として以下のような環境整備が望ましいとされています。
また、トイレ内は菌の温床となりやすいので、感染症を拡大しないように空気・湿気がこもらないような環境づくりが求められます。
各所の清掃頻度は原則1日1回以上の湿式清掃とし、空気の入れ換えを行いながら湿気がこもらないようにします。必要に応じて、床の消毒も行うようにしましょう。使用した雑巾やモップをこまめに洗浄・乾燥させることも大切です。
汚染がひどい、もしくは新たな汚染が発生しやすい場合については、入所者や職員の接触が多い部分の清掃回数を増やし、見た目の汚染が放置されないように注意しましょう。汚染が発生しやすい場合としては、以下の入所者のケースがあげられます。
感染源となる嘔吐物・排泄物は、処理を適切に行なわないと感染を拡大させる恐れがあるため、十分な配慮が求められます。入所者の嘔吐物・排泄物を処理する際は、手袋やマスク、ビニールエプロンなどを着用しましょう。また、汚染場所やその周囲は、0.5%濃度の次亜塩素酸ナトリウム液できれいに拭き取り、消毒します。処理後は、手洗いや手指の消毒を十分に行うようにしてください。
嘔吐物の処理に必要なものを収納した専用の蓋つき容器を処理用キットとして用意しておくと、いざというときに迅速に対応できます。処理用キットには以下のものを備えておくと良いでしょう。
入所者の血液などの汚染物が付着している場合、手袋を着用して清拭除去し、適切な消毒薬で清拭消毒を行いましょう。消毒前に清拭除去して汚染病原体の量をなるべく減少させておくことが、その後の清拭消毒の効果を高めることにつながります。化膿した患部にガーゼなどを使用した場合は、ほかのごみとはビニール袋を分けて密封し、感染性廃棄物として分別処理します。このとき直接触れないよう十分に注意しながら扱いましょう。
処理時に着用する手袋や帽子、ガウン、覆布(ドレープ)などは、できる限り使い捨て製品を使用するのが望ましいとされています。使用後は汚物処理室で専用のビニール袋や感染性廃棄物用の容器に入れて密封し、専用の業者に処理を依頼します。
入所者や職員に感染症が発生した際、市町村などの主管部局および保健所に対して発生報告が必要になります。以下はあくまでも事例のため、詳しくは自治体にお問い合わせください。
食中毒を起こす菌にはどのようなものがあるのか、菌の特徴や症状について解説します。
ウエルシュ菌は人や動物の大腸内に常在している菌で、下水や河川、土壌などにも生息しています。ウエルシュ菌による食中毒は給食病とも呼ばれ、カレーや煮込み料理など大鍋・大釜で大量に調理して作り置いていた食品での事故発生が多いのが特徴です。
ウエルシュ菌は100度で1~6時間加熱してもなかなか死滅しない芽胞を形成し、酸素がない、またはとても少ない状況で増殖します。酸素が抜けた状態の大鍋・大釜はウエルシュ菌が増殖するのにもってこいの環境で、さらに増殖に適した温度(12~50度)に長く置かれると、食品中で急速に増殖。毒素を産生するウエルシュ菌が大量に増殖した食品を食べることで腸管内に感染し、食中毒の症状を引き起こします。
一度に大量に調理して作り置く際は、ウエルシュ菌の増殖を抑えるために加熱調理後は冷却したり、小分けにしたりなどの管理が重要です。
ウエルシュ菌による食中毒は、6~18時間(平均10時間)の潜伏期間を経て、腹痛や下痢などの症状を引き起こします。発熱や嘔吐はほとんど見られず、多くの場合は発症後1~2日で回復するとされています。ただし、基礎疾患のある方や子ども、高齢者は重症化することがあるので注意が必要です。
ノロウイルスは、国内でも多くの患者数を毎年発生させている食中毒事故の原因です。感染力が強いのが特徴で、集団感染のリスクが高いウイルスとしても知られています。特に高齢者や抵抗力の低い方は重症化しやすく、死亡事例の報告もあり。ノロウイルスによる食中毒は12~3月にかけて多く発生し、特に発生件数が多いのが3月です。
ノロウイルスによる食中毒というと冬季に発生するイメージを持たれていますが、実際は3月の春季にも2,000件前後の事例があるため、年間を通して注意する必要があります。
ノロウイルスによる食中毒の潜伏期間は24~28時間程度で、吐き気や嘔吐、下痢、腹痛、発熱などの主症状があらわれます。特に嘔吐については、突然かつ急激に強く症状を引き起こすのが特徴です。そのほかの症状には頭痛や咽頭通、食欲不振、筋肉痛などがあげられます。
いずれの症状においても通常は3日以内で自然回復するとされていますが、乳幼児や高齢者、免疫不全などの抵抗力の弱い方は重症化することがあるので注意しましょう。
そのほかに注意が必要なのは症状があらわれない、または軽度の症状しか出ない不顕性感染者です。不顕性感染者もノロウイルスを体内に保有して排出するため、高齢者施設においては調理など飲食に携わる職員を対象に定期的な検便を行い、感染の有無を確認する必要があります。
ブドウ球菌のなかでも黄色ブドウ球菌は、過去に大手乳業メーカーが起こした大規模な食中毒事故の原因になったことでも知られる食中毒菌の一種です。ぶどうの房のように連なった球菌をしており、食品の上で増殖する際に産生する毒素(エンテロトキシン)によって食中毒を引き起こします。
黄色ブドウ球菌が産生する毒素は耐熱性が強く、通常の加熱では分解されません。また、比較的高い食塩濃度でも増殖するため、塩にぎりや自家製の漬物などにも注意が必要です。
黄色ブドウ球菌による食中毒は潜伏期間が比較的短く、食後約30分~6時間で悪心や嘔吐、下痢などの症状があらわれます。悪心・嘔吐は黄色ブドウ球菌による食中毒において必ず発生する症状で、嘔吐の回数は接触した毒素の量によって異なります。通常は24時間以内に改善するので特別な治療は不要とされていますが、脱水症状や血圧の低下、脈拍微弱などにより重症化する場合もあります。
カンピロバクター属菌は鶏や牛などの体内に生息しており、食中毒の原因として毎年上位にあがる食中毒菌です。カンピロバクター属菌は熱に弱いので通常の加熱調理で死滅するほか、酸素のないところでは増殖できず、大気(酸素濃度約21%)に触れていてもいずれ死滅します。
一方で、鶏肉の間など適度に酸素濃度が低い(5~15%)ところで生き残り、30~46度で活発に増殖。低温では増殖しないものの常温の環境よりは生き残りやすく、冷蔵庫温度の1~10度で生存期間が延長します。また、ほかの細菌性食中毒に比べて、比較的少ない菌数でも発症するので注意が必要です。
カンピロバクター属菌による食中毒では、下痢や腹痛、発熱、悪心、嘔気、嘔吐、頭痛、悪寒、倦怠感などの症状が現れます、1週間ほどで完治することがほとんどですが、感染した数週間後に手足の麻痺や顔面神経麻痺、呼吸困難などを引き起こす「ギラン・バレー症候群」をまれに発症することも。鶏肉などのカンピロバクター属菌による食中毒リスクの高い食材を取り扱う場合は、適切な取り扱いや加熱調理が求められます。
サルモネラ属菌は、鶏やアヒルをはじめ、牛や豚、猫、犬、爬虫類など多くの動物の体内に生息している菌です。高湿度下や水分活性が高い状況で、かつ35~43度の温度帯で活発に増殖します。一方で7度未満の低温下では発育できなくなると言われており、加熱に弱いのも特徴です。そのため、サルモネラ属菌による食中毒の予防対策としては、よく加熱することが重要となります。
サルモネラ属菌が付着した食品を摂取した場合、通常8~48時間の潜伏期間を経て悪心や嘔吐の症状があらわれ、さらにそれから数時間後に腹痛や下痢などの症状を引き起こします。サルモネラ属菌の種類によっては3~4日ほどの潜伏期間後に発症する場合もあり。下痢の症状については1日数回~十数回程度で、3~4日ほど持続します。人によっては症状が1週間以上続く場合もあるようです。
サルモネラ属菌による食中毒の症状は比較的軽度で、多くの場合は自然治癒によって回復します。ただし、小児や高齢者の場合は、脱水症状によって命にかかわる深刻な状態になることもあるので注意が必要です。
手洗いは感染対策の基本のため、職員の手洗いも徹底させましょう。手洗いで心がけるポイントは「1ケア1手洗い」「ケア前後の手洗い」の2つ。介護職員の手指を介した感染は気をつけるべき感染経路のため、嘔吐物・排泄物などで汚染された場合は、すぐに流水下で洗浄しましょう。
感染している入所者や感染しやすい入所者のケアをする場合は、洗浄消毒薬または擦式消毒薬を使用して手指消毒を行います。また、手洗いで使用する水に除菌水を使用するのもおすすめです。
【手洗いの注意点】
昨今問題になっている感染症や食中毒のリスクを軽減するため、より徹底した衛生管理が求められています。
一方で、除菌効果が高いものはその分危険性も高まり、ただ「除菌力が高ければ高いほどよい」という分けではありません。
そのため、使用するシーンに合った除菌水を選ぶことが重要です。
そこで、用途ごとにオススメの除菌水製造装置をご紹介。ぜひ参考にしてみてください。
※2023年6月調査 googleで「除菌水製造装置」「オゾン水生成装置」「電解水生成装置」で検索して表示された、除菌水製造装置取り扱い企業のうち、公式HP上で取り扱い事例が掲載されており、国内製造でサポートを行っている製品を以下の特徴で選出。
ユニゾーン…調査した中で唯一操作ボタンが無く、毎日10分間の利用で約2年間メンテナンスフリー
エルくりんDX…調査した中で、1分間に生成するオゾン水の量が一番多い
アクアプリータ…調査した中で唯一酸性とアルカリ性電解水を同時生成する電解水生成器を提供